Close to you
私の提案に、奥野くんは「ありがとう」と安心した顔になる。それから目に強い力が宿って、硬い声を出した。
「スマホ、番号交換しねぇ?」
「え?」
「そっちのが手間はぶけていいと思う」
「ごめん、今さ、電池切れしちゃってて……」
私はさらっとウソを吐いた。番号の交換がイヤだったんじゃない。お母さんの機嫌を損ねないようにするためだ。
数ヶ月に一度、お母さんは私のスマートフォンを抜きうちでチェックする。
余計なアプリをダウンロードしていないか、電話帳に見知らぬ名前が入っていないか。
徹底的に検査して、少しでも怪しいと感じたら、自分が納得するまで詰問してくる。
「私の番号教えるから、夜の……10時くらいになったら電話して?」
私はメモ帳を取りだして、自分の番号を書きつづった。
そのときだった。
「♪〜〜♫〜〜」
妙に明るい着信音が鳴った。