シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 ダイニングチェアに座り、私の荷物を鞄に詰め込む慧悟さんを見守る。
 本当は私も手伝いたかったけれど、「希幸は絶対安静でしょ」と取りあってもらえなかった。

 母はパッキングを続ける慧悟さんを手伝っている。

「まさか、慧悟さんがこんなところまで来てくださるなんて」

 母が言うと、慧悟さんは「希幸さんがいるならどこまでも」と、当たり前のように答えた。

「本当はきちんとご挨拶すべきだったのですが、希幸さんが緊急事態ですのでこんな状態で失礼致します」

「そんなことはいいのよ。この子が幸せならね。でも――」

 母は心配そうに、眉をハの字にする。  

「転院先はベリが丘の総合病院なのよね」

 慧悟さんは「はい」と答えた。
 転院するならベリが丘に、と病院で言ったのは慧悟さんだった。彼いわく、一番信頼できる病院なのだそう。

「ご心配なさらなくとも、あの総合病院でしたらセキュリティもしっかりしておりますし、私もすぐに会いに行ける。希幸さんは、僕が守りますから」

 母は「心強いわね」とすぐに頬をほころばせた。

「お母さんも、ベリが丘に戻ろうかしら」

 母のつぶやきに、慧悟さんは「ぜひ」と言った。

「ここは幾美財閥の所有するマンションなので不自由はないとは思いますが、それでも裕子さんには僕はベリが丘に戻ってほしいと思います」

 慧悟さんの言葉に、母は「まあ」と声を漏らす。

「僕は裕子さんのような優秀な家政婦を解雇すべきではなかったと思っています。なので、裕子さんが幾美家に戻れるようにしますね」
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