シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~

23 戻ってきたベリが丘

 慧悟さんの運転する車はそのまま、まっすぐにベリが丘へと戻ってきた。ベリが丘のシンボルタワー、ツインタワーが見えると、少し離れていただけなのに、懐かしい気持ちになった。

 海辺を走る車からは、大型の旅客船が停まっているのが見える。その向こうの海は、もうだいぶ柔らかくなった日差しを反射して、薄オレンジ色に輝いている。

「ねえ希幸、お腹の子の名前はもう決めたの?」

「え?」

 慧悟さんを振り向く。
 白波に反射した光がその顔を照らして、キラキラしていた。

「いや、希幸とは、意図して未来の話は避けていたんだ。希幸が悩んでいるのは、何となく勘づいていたから」

 慧悟さんは、私以上に私を見て、その心の奥まで理解してくれているのかもしれない。
 慧悟さんのことを置いてけぼりにしたことを反省し、余計に慧悟さんへの愛しさが募った。

「でも、僕はもう無理に避けるのはやめたいんだ。楽しい未来を、希幸と築きたいから」

 そう言う慧悟さんは、本当に嬉しそうだ。

「名前は、まだ考えていません。慧悟さんも、一緒に考えてくれますか?」

「もちろん」

 つられて私も頬を綻ばせると、慧悟さんの目尻が下がる。
 外は暑く、車内は冷房が効いているのに、私の胸はぽかぽかと暖かくなった。

 やがて、ベリが丘の総合病院の駐車場へ着く。
 慧悟さんと二人暮らしを始めるきっかけとなった場所に戻ってきたのは、なんとも不思議な感じがする。

 慧悟さんは何も厭わず私を抱き上げ、受付のある階まで進む。
 私を待合のソファにふわりと下すと、入院の手続きをして戻ってきた。

「病室まで、僕が運ぶからね」
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