シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 庶民には広すぎる、病院の個室病棟。

「お医者さんが近くにいるなら、僕も安心できる。希幸も、お腹の子も守れるからね」

 慧悟さんは満足そうに、ベッドに横になった私の隣に座っている。
 私はトイレ以外では立ち上がってはいけないと言われたため、ただベッドに横になっていることしかできない。

「慧悟さん、あの、お仕事は――」

「あの日も言ったでしょ。僕が一番大事なのは、希幸なんだって。仕事なんか、二の次でいい」

「でも――」

 言うと、慧悟さんは困ったといわんばかりに眉をハの字にひそめる。

「分かってる、希幸はこういうのは喜ばないよね。大丈夫、ちゃんと部下に任せてあるから」

 慧悟さんが笑顔でそう言って、私はほっと胸をなでおろした。

「ところで――」

 慧悟さんは言いながら、私の頬を撫でる。

「どうして希幸はベリが丘を出て行ったの? いつの間にか、オーベルジュも辞めていたし」

 その言葉に、私は言葉を詰まらせる。

「教えてくれないかな。きっと、母さんだろうと思うけれど」

 その言葉に、私はそっと口を開いた。
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