シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 日の光が窓から差し込む。
 明るい天井をぼうっと眺めながら、私はベッドの上でじっとしていた。

 特に不自由を感じるわけではないが、何もできないというのは思った以上に辛い。
 点滴が落ちていくのを、じっと見ているくらいしかすることがない。

 することがないと、色々なことを考えてしまう。
 私は戻ってきて良かったのだろうか。
 私はこんなところにいていいのだろうか。

 脳裏に響くのは、あの日奥様に言われた言葉だ。

『前埜家には、失望しました』
『私は希幸さんには何度も忠告してきました』
『けれど、もう手遅れだなんて』

 けれど、慧悟さんは全てを解決する方法を考え、動いているのだろう。
 慧悟さんを信じて待つしかできない今が、やけにもどかしい。

 気を紛らわせたくて、病室のテレビをつけた。
 お昼のワイドショーがスタジオを笑いに包んでいて、私もつられて笑みを浮かべることができた。

 突然、病室の扉がガラガラと開いた。

「希幸ちゃん!」

 飛び込んできた人物に、驚き目を見張る。

「彩寧さん!」

「もう、心配したじゃない!」

 そういう彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
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