シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「お腹の子を――!?」

 彩寧さんの目が見開かれる。
 けれど、私は真剣だった。伝わるように、じっと彩寧さんを見つめる。

 私は、幾美家とは結ばれない方がいい。
 誰かが不幸になるのなら、私は慧悟さんと結ばれない方がいい。

 伝われ――っ!

 彩寧さんは言いかけた言葉を飲み込むように、ごくりと固唾をのみ込んだ。
 それから、ふう、とゆっくり息をつき、私の顔をじっと見た。

「希幸ちゃん、私はね、慧悟を信じて待っていて欲しい。けれど――」

 涙を堪え、下唇を噛んでいる私は今、多分すごく変な顔をしている。
 私がそんな顔だからだろう。彩寧さんはため息をこぼした。

「意志は固いのね」

 言われ、こくりと頷いた。

「彩寧さん、それで、もうひとつお願いがあるのですが――」

「なあに?」

 彩寧さんは困ったように眉をハの字にしていた。

「幾美家のご夫妻を、ここに呼んでもらうことってできませんか? 慧悟さんに知られる前に、私からもう一度ちゃんと話をしたくて」
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