シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
 慧悟さんはため息を零し、「なぜ言わなかった」と彩寧さんに問う。

「仕方ないじゃない、私だって知ったのは二週間前だった。それに、希幸ちゃんに黙ってて欲しいって言われたのよ」

「じゃあ、希幸がここにいることを知ってて、この店を予約するように僕に言ったのか」

「ふふ、そういうこと」

 彩寧さんが笑うと、慧悟さんは一層大きなため息を零した。

「あ、あの!」

 気まずい空気が流れて、私は慌てて口を開いた。

「私がベリが丘に戻ってきたのは、お二人のご結納を聞いたからなんです」

 二人の顔が、同時にこちらを向く。

「あの時の約束を、果たしたくて。お二人のウェディングケーキを、私に作らせていただけませんか?」

「約束……?」

 彩寧さんはきょとんとして、私に向けていた視線を慧悟さんに向ける。
 慧悟さんはなぜかわずかに顔をしかめ、唇をぎゅっと結ぶ。けれど、それは一瞬だった。

「僕も覚えているよ。あの日の約束」

 そう言った慧悟さんは、もう優しい笑顔を浮かべていた。
< 16 / 179 >

この作品をシェア

pagetop