シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~
「ここ……」

 それから、私を車に乗せた慧悟さんはベリが丘の南西、ビジネスエリアにあるホテルに私を連れてきた。
 フロントに何かを言ってから、私をそのエレベーターに乗せる。

 やってきたのは、高級ホテルのスイートフロアだった。
 パーティーの会場は下階だったが、まさか自分がこの階に足を踏み入れることになるとは。

 フロアの廊下をしばらく進んだところで、慧悟さんがカードキーをドアノブにかざした。
 ガチャリと開錠された音がして、慧悟さんがその扉を開いた。

 オーベルジュとも趣きともまた違う、洗練されたスイートルームが目の前に現れる。
 オーベルジュが小田舎風であるなら、ここは都会のスタイリッシュなラグジュアリーさだ。

「おいで、希幸。今日からここに、一緒に住むんだ」

 先に部屋内に入った慧悟さんが振り向き、こちらに手を伸ばす。
 手を取るのをためらっていると、慧悟さんは私の手首を掴んで自身の方へ引き寄せた。
 部屋に入ってしまう。

「うわぁ……!」

 入口からは見えなかったスイートルームの奥。
 そのきらびやかさに、私は思わず声を漏らした。

 落ち着いた間接照明の調光は、世界をオレンジ色にする。
 憧れた、慧悟さんとの幸せ家庭の色だ。

「気に入った?」

 小首を傾げる慧悟さんに、私はうなずき返すことはできない。
 目をぱちぱちさせながら、部屋内に視線をさまよわせていると、慧悟さんがわざと私の視界に入り込んできた。

「大丈夫。僕はちゃんとここで仕事をするし、希幸の送り迎えもする。結婚のことも何とかする。だから、そんな不安そうな顔をしないで」

 慧悟さんの言葉は、そっと胸を溶かす。
 こくりと頷くと、慧悟さんは満足そうに頷いた。

「軽食を取ろうか。ルームサービスを呼ぶよ」
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