シュクルリーより甘い溺愛宣言 ~その身に愛の結晶を宿したパティシエールは財閥御曹司の盲愛から逃れられない~

17 二人暮らし

 慧悟さんとのホテル暮らしが始まった。

 朝、起きると大好きな彼の腕の中にいる。
 その幸せな重みにまどろみたくなるけれど、私は自分を律して起き上がる。

「慧悟さん、朝ですよ」

 まだ眠っている愛しい横顔に声を掛けると、不意に動いた彼の顔がチュッと優しく唇に触れた。

「おはよう、希幸」

 起き抜けの慧悟さんは、ふにゃんと笑う。
 初めて見る彼の顔に、胸がきゅっとなる。

「ふふ、そんなにじっと見つめられたら、ベッドから出られなくなっちゃうなぁ」

「ご、ごめんなさいさっさと出ましょう!」

 慌てて半身をお越し、ベッドから飛び降りる。
 耳が熱い。顔が全部熱い。
 冷ますように両頬を両手で包むと、そんな私を見て慧悟さんがケラケラ笑っていた。

「さて、僕も準備をしないとね」

 *

 行きは慧悟さんの車で送ってもらう。
 オーベルジュの開店時間を過ぎると、慧悟さんがオーベルジュにディナーを食べに来る。
 食事をしたりバーで過ごしたりしながら、私の仕事が終わるのを待ち、一緒にホテルまで帰ってくれるのだ。

 慧悟さんが隣りにいてくれる毎日。
 夢に見た、幸せな日常。

 そのはずなのに、常に胸を不安が掠める。

 ――大丈夫。慧悟さんが、なんとかしてくれる。

 そう思うのに、胸のもやもやは晴れることはなかった。
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