強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
 実在するのかも知れぬ神様に向け、恨み節のひとつも出てしまうのは不可抗力。だって、ラインフェルド様は一カ月後の孤児院の創設記念日にヒロインと運命的な出会いを果たすことを私は〝知っている〟。

 ……そう。私はいわゆる転生者。前世の記憶があるのだ。

 前世のことは、生まれた時から覚えていたわけじゃない。思い出したのは、彼と結婚する原因になった大怪我を負った一年前。私を腕に抱き、必死で私の名前を呼びかける〝彼〟を瞳に映しながら、唐突に日本で生きた二十二年間の記憶が蘇った。
 ただでさえ生死にかかわる大怪我を負っていた私だが、その瞬間は怪我とは別の理由から心臓が止まりそうになった。私を腕に抱えているのが前世でハマった恋愛小説に登場する最推し、ラインフェルド・デアランブール公爵その人だったから。

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