強面騎士団長に離婚を申し出たら、私を離したくないってソレ本当ですか!? ~転生聖女は推しをヒロインルートに戻したい~
 反射的に立ち上がりかけたが、俺たちの身長差は五十センチと大きい。このまま座ったままでいた方が彼女と目線の高さが近いことに気づき、あえて席は立たずに先を促す。俺に頭ふたつ分も高い位置から見下ろされるより、この方がフェリシアも話しやすいに違いない。

「それで、話というのは?」

 愛しい妻の一言一句を聞き逃さぬよう、しっかりとその目を見つめた。
 緊張からだろうか、フェリシアが喉をひとつ鳴らす。嚥下の動きで細い首が小さく上下するのが分かった。真っ白な喉もとが妙に艶めかしく思えてしまい、体の内にぞくりとした焦燥と熱が溜まる。

 ……いかんな。色を覚えたてのほんの若造でもあるまいに。

 湧きあがる衝動を内心で自嘲気味に笑う。俺は一年間の結婚生活の中で、何度この衝動をなけなしの理性で押さえつけてきたか知れない。
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