年上幼馴染の一途な執着愛
「何で別れることになったのかは知らねえし夕姫にとっては不本意かもしれない。だけど、俺も星夜も夕姫がその男と別れてくれて正直ホッとしてる」

「……うん」


年末に帰省しなくなってから、お兄ちゃんからよく連絡が来ていた。
内容は他愛ないもので、元気か?とか、バイト大変じゃないか?とか。
それにいろいろ答えているうちに信明くんの話にもなって、相談したりもしていた。
多分、それをお兄ちゃんが日向に話したのだろう。


「夕姫は昔から男運無いだろ。だから星夜も俺も、すげぇ心配だった」

「うん」

「だから今ホッとしてる。ごめんな」

「いいの。二人の気持ちもわかるから。私の方こそごめんね、心配かけて」


そんな話をしているうちに、年が明けるまで残り一分を切っていた。


「年越しの瞬間、何する?」

「んだよその小学生みたいな質問。なんもしねーよ」

「ははっ、そっか」


残り三十秒を切って、テレビの中のアイドルたちがそわそわしながらカウントダウンをし始める。
それをじっと見つめていると、隣から息を呑む気配がした。


「……なぁ、夕姫」

「ん?」

「さっきの、夕姫を幸せにしてくれる人に出会いたいって話だけど」

「ん? うん」


それがどうしたの?と、聞こうとした時。


「……俺、立候補していい?」

「……え?」


見上げた先で、視線が絡まった。


「年越しの瞬間なにもしないっての、やっぱ撤回するわ」

「え……」


テレビからは、十秒前!という声が聞こえてくる。

それなのに、日向と私の間だけ、時が止まったかのように微動だにしない。

そして。


「俺はこのチャンス、無駄にはしねぇよ」

「な、に……?」

「……夕姫」


カウントダウンの声と共に、名前を呼んだ日向の顔がそっと近づいてきて。


「ハッピーニューイヤー!!!」


お祝いの声と共に、そっと唇が重なった。
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