年上幼馴染の一途な執着愛
「ごめんね、時間かかって。新幹線の時間大丈夫?」

「今から向かえばまだ間に合うから大丈夫」

「良かった」

「夕姫のおかげで助かったよ。ありがとう」

「ううん。私も日向のおかげで新しい家決まって安心した。ありがとう」


そのまま駅まで向かい、改札前で立ち止まる。


「時間無いから家まで送ってやれないけど、大丈夫か?」

「もう、子ども扱いしてる? 大丈夫だよ、毎日帰ってるんだから。それより新幹線遅れちゃうよ。気を付けてね」

「あぁ。また連絡する。お互いの引っ越しが落ち着いたら飲みに行こう」

「うん。じゃあまたね」


乗る路線も別々のため、ここでバイバイだ。

日向に手を振ると、私をじっと見た日向が何を思ったのか死角になる位置に私を連れていく。


「日向? どうしたの?」

「いや……」

「ん?」


首を傾げると、日向は私の腕を引いてそっと抱きしめた。
突然のことに驚き、私の体は硬直する。
日向はそんな私の耳元に顔を寄せて、


「……今夜、電話していいか?」


小さな声で聞いてくる。

そんなの、普通に聞けばいいのに。わざわざこんな至近距離で聞くなんて……。


「……う、ん。いいよ……」


頷くので精一杯の私の頬に、日向の手が触れる。
下から掬い上げるようなキスは、一瞬触れただけですぐに離れた。


「……じゃあ、またな」

「うん。またね」


なんてことないような表情をして死角から出て、手を振り改札を通っていく日向。


「不意打ちとか、ずるくない……?」


日向の耳が赤く染まっていたことは、私しか知らない。
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