年上幼馴染の一途な執着愛
「私? 私は……その人には申し訳ないけど、ただの職場の先輩としか思ったことない。優しいし頼れるのは知ってるけど、それ以上には思えない」


あれから、どうやって断ればいいのかをずっと考えていた。
私にとって浅井さんはあくまでも職場の先輩であり、それ以上でもそれ以下でもないのだ。
頬にされたキス。
……正直、すごく嫌だった。
答えると、日向は心底安心したように息を吐いているのが聞こえた。


『……夕姫』

「ん?」

『こんな時に言うことじゃないかもしれないけどさ』

「……」

『……会いたい。今すぐ夕姫に会いたい』

「っ……」


胸が締め付けられるほどに切ない声に言葉が詰まる。


『今から、会いに行っていいか? ……いや、やっぱダメって言われても行く。そこで待ってて』


私の返事を聞く前に、日向はそう言って電話を切ってしまった。



それから十五分後。

窓の向こうで車のヘッドライトが消えた少し後にインターホンが鳴り、モニターにはパーカー姿の日向が映る。
急いで玄関ドアを開けると、そのまま勢い良く抱きしめられた。
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