年上幼馴染の一途な執着愛

動揺と返事

*****

『夕姫? どうした? 何かあったか?』

「あ……ううん、なんでもない」

『……』


仕事終わり、約束していた通り日向からかかってきた電話に出たものの、私は動揺が隠しきれない。
最近こんなことばっかりだ。すぐに思考が停止する自分自身が憎たらしくて仕方ない。
せっかく日向とゆっくり話せる時間なのに、私の頭の中では浅井さんの声がこだましていた。


"秋野さんのこと口説いてもいい?"


予想だにしなかった言葉と頬に感じた感触に、頭が混乱している。


『夕姫』

「ん?」

『やっぱお前、何かあっただろ』

「え……」

『俺に隠し事できると思うなよ?』


顔も見えないのに、どうして日向にはわかってしまうのだろう。
不思議で仕方ない。
だけど、私のことを好きだと言ってくれている日向に、浅井さんのことをどう言えばいいのかがわからない。


『何があった?』

「……」

『言って。心配だから』

「あの……」

『うん?』

「その……今日、会社の人に、言われたの」

『うん、なんて?』

「……秋野さんのこと、口説いていいか……って。それで……頬に、キス……されて」


日向が、息を呑んだ音が聞こえた気がした。


「その人、会社の先輩なんだけど、今までそんな素振りなかったしいきなりだったからびっくりして……。それで動揺しちゃってたの。ごめん、日向にこんな話するべきじゃないっていうのはわかってる。自分で解決しなきゃいけないことくらい、わかってる」


返事が無いのは肯定の意だろう。
日向は少し黙った後、


『……夕姫は、その人のことどう思ってんの?』


恐る恐る聞いてきた。
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