先輩!
「河合さん、また事情はこいつから聞いてください。すみません急いでるので」

スラリと長身の佐々木くんがこっちに向かって大きく頭を下げ、「行けるか?」と芽衣ちゃんの顔を覗きこんだ。


「ごめん虎太郎。もう大丈夫。行こう。穂乃果さん落ち着いたら連絡します」

今度はしっかりした足取りでも駐車場に向かった芽衣ちゃんを見送った。


騒然とするロビー。


近くにいた同僚たちも、社内一の有望株でありモテ男の久保さんの身に何か起こったことを知り、心配そうに小声で話をしている。

「ごめん先帰って!」


わたしはそんな同僚たちを放って、営業部へ走り出した。


営業部内は騒然としていた。普段ほとんど来ることがない部署だけど、これは明らかに異常だ。

男性ばかりのその部屋は、頭を抱えデスクでうずくまる者。どこかに電話している者。数人で集まって話をしている者。

その全員が、悲痛な面持ちだ。


尻込みしている場合じゃない。

目当ての同期を見つけ駆け寄った。
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