花咲くように 微笑んで
「みなさん、こんにちは!」
「こんにちはー!」
「これからおはなし会を始めます。今日のおはなしは、これ。『まあくんとママのおまじない』です。どんなおはなしなのかな?それでは、はじまりはじまり…」

菜乃花の明るくて優しい声。
子ども達のキラキラと輝く瞳。

颯真は、少し離れたベンチに座ってその様子を眺めていた。

「…おともだちと、ケンカをしてしまったまあくん。おうちに帰ってからも、かなしくてしょんぼり。『あした、ごめんなさいって言えるかな』つぶやくまあくんに、ママが言います。『じゃあ、とっておきのおまじない。まあくん。こっちにおいで』まあくんが近づくと、ママはまあくんをぎゅっと抱きしめました。まあくんの背中を優しくトントンしながら、ほっぺとほっぺを合わせておまじないをささやきます。『だいじょうぶ。きっときっと、だいじょうぶ』まあくんの心はほんわか、お顔はにっこり大変身。『ほらね。おまじない、きいたでしょう?』『うん!あした、ちゃんとごめんなさいって言えるよ』『そう。仲直りできるといいね』そして二人でもう一度、おまじないをつぶやきます。『だいじょうぶ。きっときっと、だいじょうぶ』…おしまい」

菜乃花が本を閉じると、わあ…と子ども達に笑顔が広がった。

「どう?素敵なおはなしだったね。みんなもママにおまじない、やってもらおうか」
「うん!」

子ども達はママを振り返り、ぎゅっと抱きつく。
ママは優しく我が子をトントンしながら、頬をくっつけて囁く。

「だいじょうぶ。きっときっと、だいじょうぶ」

皆の間に笑顔が溢れる。
幸せで温かい光景。

(きっとあの女の子にも、こんな時代があったんだ。そして数年後には、こうして我が子と幸せそうに笑っているはずだったんだ)

颯真は唇を噛みしめると、込み上げる涙をグッと堪えていた。
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