二人の永遠がこの世界になくても
その瞬間だった。

一瞬の出来事だった。
サンタの人の体が、後ろから見えない何かに持ち上げられたみたいに宙に浮いて、歩道橋の下に落下した。

いつもは車の通りがすごく多い大通りだ。
でも今日は点灯式の為に車の走行が規制されていて、サンタの人が落ちたちょうど真下には点灯式の機材なんかを乗せたトラックが停まっていた。

普段だったら間違いなく車に轢かれていただろうけど、不幸中の幸いでサンタの体はトラックの上に落ちて、反動で道路に落下した。
それでも相当な衝撃なのだろう。
サンタは道路に転がったまま動かない。

広場中が大混乱になった。
沢山の悲鳴の中、機材を乗せたトラックの運転手が動揺しながら電話で救急車を呼んでいる。

ニヤニヤと「サンタなんて消えちゃえ」って言ったお兄さんは、自分が言ったことも忘れてしまったみたいに「なんだよ…あれ…何があった?」って言いながら、歩道橋の向こうを見つめている。

広場は騒然となった。
さっきまでイルミネーションを囲んでいた人達が、道路で横たわるサンタを囲んで、大きな輪ができている。

「春華…あれ…」

「ヨヅキ、もう帰ろう」

「でも…」

「イルミネーションはきっともうやらないよ。残念だけど」

「そうじゃなくて…あれ…なんで…」

「いいから。帰ろう」

春華が私の手を取って歩道橋に背を向けた。
もう帰ろうって私を急かしたのに、春華はゆっくり歩いた。
私は何も言えなくて黙って歩いた。
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