二人の永遠がこの世界になくても
「なんでうちの前に立ってたの…」

「行くとこが無くて」

「家出してきたんですって」

「だったら尚更返してきてよ!この子の親に通報でもされたらどうすんのよ!」

「大丈夫です。ちゃんと″ちょっと家出してくる″って言ってきてるんで」

「そんな…″ちょっとコンビニ行ってくる″みたいなノリで…」

「いいじゃない。パパも居ないんだし、男の子がおうちに居てくれたほうが安心でしょ?」

パパは単身赴任で県外に出ている。
ママは専業主婦だけど、私の学校があるからパパとは一緒に行けなかった。
転勤は三年くらいになるらしい。

「いやいや…第一パパが週末に帰ってくる時はどうすんのよ」

「もう一人産んでましたーなんてサプライズはどう?」

「パパが転勤になったのは先週からでしょ!」

ダメだ。頭がクラクラしてきた。
ママのこと、元々天然だなとは思っていたけれど、ここまでとは…。

「少しの間だけ。ダメですか?」

「少しって?」

「本当に少しです。自分の所に帰れる日まで」

″自分の所に帰れる日まで″?

含みのある言い方が気になった。
どんな事情があって家出なんてしてきたんだろう。
なんでうちの前に居たんだろう。

「…分かった。少しだけだよ。その代わり、私の部屋には絶対に勝手に入らないでね!」

「ありがとう!本当に助かるよ。君は命の恩人だ」

「何言ってんの」

「本当だよ。ママさんもありがとう」

「いいのよ。我が家だと思ってくつろいでねー」

こうして私とママ、突然現れた正体不明の男の子との奇妙な生活が始まった。
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