人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰かがわかりません。英雄騎士様が「この子は俺の子だ」と訴えてくるのですが!

3.

「おじさん。ご本、よんで」
「カイル。俺のことをおじさんと呼ぶのは、やめようか?」
 おじさんと呼ばれるたびに、魂がすり減っていくような気がした。
 カイルは「なんで?」とでも言いたげなように、首を傾げる。
「おじさんにも名前があるんだよ」
「おじさんのなまえ……」
「カーティスだ」
「カーティー」
「カーティス」
「カーティー」
「……本当はカーティスだが、特別にカーティーでも許す」
「カーティー、ご本、よんで」
 ソファからぴょこんとおりたカイルは、本やらおもちゃやらがある一角から、一冊の絵本を持ってきた。
「ご本、よんで」
「わかった」
 カイルから絵本を預かったカーティスは、絵本を開いた。そこで隣に座り直したカイルが顔を寄せて、絵本をのぞき込んでくる。
「抱っこ、するか? ここに座ったほうが、絵本はよく見えるだろう?」
 カーティスは自分の膝の上をぽんぽんと叩く。
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