ニセモノカップル。

恋を知って、恋に気づく

神楽くんと付き合って、二週間と少しが経った。
朝も以前よりも寒くなって、制服の中にカーディガンを着るだけじゃ心許ない。

相変わらずクラスに友達はいない。
だけど、授業のプリントはちゃんと回ってくるし、教科書が隠されたりするような陰湿ないじめはなくなった。
なにより、毎日のバツゲームがなくなったのがありがたい。
……相変わらず、七瀬さんたち三人組の私へのあたりは強いけれど。

移動教室だってトイレだって、別にひとりでも平気。
だいたい、私は勉強をしに学校に行ってるんだし。
……なんて、さすがに強がりすぎかな。
でも、以前の状況に比べたらだいぶ今はマシだから、神楽くんには感謝しないといけない。

今日は日曜日。
私と神楽くんは本当のカップルじゃないから、土日は会わない。
誰かにイチャイチャを見せつける必要もないからね。
だけど、なんでかな。
平日は毎朝一緒に学校に行って、昼休みも一緒に過ごしている。帰りだって。
前に神楽くんの家に行ってから、妹の凛ちゃんが私によく懐いてくれた。
なんだか本当の妹ができたみたいで、とても嬉しかった。
そのこともあって、神楽神社にもよく行った。
一緒に帰って、遊んで、色々なことを話してうちに、私たちはどんどん打ち解けていった。
いや、神楽くんはどうなんだろう。最初に話したときから調子が変わらないからわからない。
だけど、少なくとも私は彼に心を開いていると思う。
今日、朝起きてそれがわかった。

彼に会えない日曜の朝が、寂しいと感じたからだ。

これは友達として? それとも……。
なんだか泣きたくなってくる。
私と神楽くんはニセモノのカップル。
お互いに利益があるから契約した関係だという事実に、押しつぶされそうになるから。

リビングに降りると、お父さんもお母さんもすでに家にはいなかった。
うちの両親は共働きで、土日も関係なく働いている。
大変なのを知っているから、いじめのことも相談しようとは思えなかった。
でもこれは、お母さんたちが悪いわけじゃ、ない。

冷たくなったトーストをそのままかじる。

「今日は、気分転換にでかけてみようかな」

誰にも届かない独り言。
だけど、めいっぱいオシャレをして、でかけたい。
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