天妃物語 〜鬼討伐の条件に天帝の子を身籠ることを要求されて〜
「あ、あっ……ん」

 私をいたわるような(ゆる)やかな動きですが、揺さぶられるたびに声が漏れました。
 足の指先まで熱を(とも)すそれに私は(たま)らなくなってしまう。
 私は黒緋の背中に両腕をまわしてしっかりとしがみ付きました。
 強制的に与えられる快感を恐れてしまうけれど、黒緋が(なだ)めるように両腕でしっかりと抱きしめてくれます。

「あっ、くろ……あけさまっ……、あ、ああっ、ん……くっ」
「鶯っ……」

 黒緋の声もくぐもった声になっていました。
 動きが早くなって限界が近いのだと感じます。

「ん、ああっ……。くろあけさま……、あっ……」

 名を呼んで黒緋の頬に触れました。
 両手で黒緋の頬を(つつ)み、私からそっと口付けます。
 それは子どもの(たわむ)れのような(つたな)い口付けでした。
 でも黒緋は嬉しそうに目を細めて微笑んでくれます。

「鶯、これからも側にいてくれるんだな。ありがとう」

 その言葉に私はなにも答えません。
 でも黒緋を抱きしめる両腕に力を込めました。
 すると黒緋も強い力で私を抱きしめてくれる。離すまいとするように強く、強く。

「鶯、鶯っ……」
「あ、ああっ、んんッ、ぅ……」

 黒緋が私の名を呼びながら動きを激しくしました。
 私の声も甘さが増して切羽詰(せっぱつ)まったものになっていく。
 そしてひと(きわ)高い声を上げて達したのと同時に、体の奥に黒緋の(たかぶ)りが叩きつけられました。

「あぁ、ん……」

 体が熱くなって、小さく痙攣(けいれん)したように震えます。
 初めての行為に意識が朦朧(もうろう)としていました。
 白く(かす)みがかかっていく視界の中で黒緋を見つめます。
 黒緋も額に汗を浮かべて息を乱していました。こんな彼の姿を見るのは初めてで、どうしてでしょうね。こんな時だというのになんだか可笑(おか)しい。
 体力の消耗(しょうもう)が激しくて体が重いです。指先一つ動かすのも億劫(おっくう)に感じています。
 でもぐったりしながらも黒緋の頬に触れ、黒髪を撫でるように指で()いてあげました。
 疲れて急激な睡魔に襲われるけれど、ぼんやりとした意識の中で愛おしい御方(おかた)の髪を()く。
 そう、とても愛おしい。唯一の存在。
 この人のためなら私のすべてを引き替えにしても構わない。たしかにそう思えるのです。

「黒緋さま、……わたしの……愛おしい御方(おかた)……」

 夢うつつのなかで呟きました。
 届いた言葉に黒緋がハッと表情を変えた気がしたけれど、(まぶた)が重くて、もうたしかめることもできません……。

「鶯、眠ったのか?」

 黒緋に問われたけれど答える気力はありませんでした。
 意識を失う寸前に唇にそっと唇が重ねられます。

「おやすみ、鶯」

 黒緋はそう言って私を抱きしめ、彼もまた目を閉じたのでした。



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