愛なき政略結婚は愛のはじまりでした
 夕食を終えた後は、雅は清隆からの電話はまだかとずっとそわそわとしていた。早く清隆の声が聞きたい。しかし、その電話は一向にかかってこず、雅は少し意外な形で清隆との会話を果たすこととなった。

「姉さん、はい」
「え?」

 誠一郎はなぜだか自分の携帯電話を雅へ差し出してくる。雅が半信半疑でそれを受け取れば、誠一郎が「電話」と言って耳にあてるよう要求してくるから、雅は恐る恐る受け取ったそれを耳にあてる。

『もしもし?』
『雅? 雅なのか?』

 雅の鼓膜を震わせるその声に、雅の心も大きく震える。聞きたくて、聞きたくてたまらなかった声だ。

『はい……清隆さん?』
『ああ。そうだ』

 清隆だと確信できれば、もう堪えられなかった。愛しい人と話ができるこの状況に涙が溢れだす。
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