一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜

第7話 成哉side

 藤堂成哉の父親は医師。専門領域は乳腺外科で物心ついた時から父親の背中を見て育って来た。母親は看護師である。
 成哉が初めて医師になりたいと考えたのは幼稚園の時。成哉が階段から落ちて左腕の骨を折る怪我を負った際、父親が当時いた大学病院に搬送されたのがきっかけだった。

「パパが治してくれるの?」
「そうだよ。だから頑張ろうね」

 搬送された成哉を診断し、手術したのが父親だった。父親のおかげで成哉の怪我は順調に治っていったのだった。

「成哉くん。リハビリ頑張ろうね」
「その前にパパ見に行きたい」

 こんな感じで入院中の成哉は父親に会いたいとよく看護師にねだっていた。

「でも藤堂先生今は診察中だから……」
「診察見ちゃだめなの?」

 父親からは成哉がねだるようなら、診察中でも診察室に来ても構わないという申し出があったおかげか、成哉は父親が患者に接する場面を幼い頃から間近で見る事が出来たのだった。

「あ、あの子藤堂先生の息子さん?」
「そうなんです。今怪我しちゃって入院中でして。成哉。挨拶しなさい」
「……初めまして。藤堂成哉です」
「あらあ、可愛い。早く怪我が治りますように」
「ありがとう、ございます」
「良い子ねえ。先生、この子も医者になるんですか?」
「さあ、今はまだ分かりませんよ」
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