一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
「では、こちら切りますね」

 右腕についていたネームバンドが看護師が持つ裁ちばさみによってばつんと切られた。これで退院の手続きが全て終了した事になる。

「ありがとうございました」

 入院費については後日請求書が郵便で送られるので今日支払う必要はない。私達はそのまま1階に降りタクシーで病院を後にしたのだった。

「まことは託児所ですか?」
「ええ、そうです。また夕方にお迎えに上がります」
「あっ私も一緒に行っていいですか?」
「ぜひ!」

 黒い大きなタクシーに乗り、外の景色を満喫する。ツインタワーに高級ホテル群。まだラグジュアリーさに完全に慣れた訳ではないがそれでも見ていて少しだけ安心できたのは、入院期間が長かったからだろうか。
 昼食は成哉の母親からの提案であるレストランに寄る事が決まった。聞けば成哉が幼い頃からたびたびそのレストランで食事を楽しんできていたと言う。

「そこのハンバーグが美味しくって!」

 レストランはビルの地下にあった。エレベーターからでも入店できるのでエレベーターから移動する。中は地下という事もあって照明はやや暗めだが、どこかバーのような雰囲気を感じさせてくれる。
 注文したのは成哉の母親がおすすめしたデミグラスソースの乗ったハンバーグのセットだ。ご飯とミネストローネのスープも付いている。結構なボリュームだったがとても美味しく頂けた。

「ごちそうさまでした」
「うん、美味しかったあ。思いついたんだけどさ愛海さん、喫茶店にハンバーグ出してみない?」

 確かにBerrys&Moonではハンバーグがお昼のランチで出ていた。メニューの1つとしてはありかもしれない。

「良いですね。加えてみます!」

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