一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 そして今日は成哉も私も休みなのでまこととお手伝いさんも連れて例の喫茶店を訪れに向かっていた。まことが座る黒いベビーカーを押しながら、道を歩く。途中で上り坂があったのでそこで成哉が私の代わりにベビーカーを押してくれながら歩いていくと、高級住宅が立ち並ぶ一角にひっそりとその喫茶店はあった。
 外観はこげ茶を基調としたカラーリングで、目立たずひっそりした感じは隠れ家風の飲食店をほうふつとさせる。看板は無く、店の出入り口横に置かれたBerrys&Moonとメニュー表が書かれた黒板の立て看板だけが置かれてある。

「Berrys&Moonかあ」
「ベリが丘の街の名前から取ったのかな?」
「多分愛海の言うとおりだと思う。さあ入ろう」

 重いガラスの扉を開けると、中にはチラシに掲載されていたような内装が広がっていた。小物は予想以上に多く、どれもが豪華で手の込んだ造りになっている。飲食スペースの真ん中付近には大きなガラスの花瓶に生けられた草花が鮮やかに咲き誇っている。花から花瓶まで大体小学校低学年の子供くらいの高さはありそうだ。なので迫力もものすごい。

「いらっしゃいませ」

 私達を迎えた喫茶店の店員はおばあさんだった。薄いピンク色のエプロンの胸元にはBerrys&Moonとショッキングピンクの糸で刺繍されている。入り口から見て左横がカウンター及びキッチンとレジになっており、右側にテーブル席が配置されている造りだ。客は今の所私達以外にはいないようだ。

「あ、もしかして星田先輩の……」
「ああ、祖母です。藤堂先生お久しぶりです」

 星田先輩の祖母だと言う喫茶店の店員が、成哉にそうにこにこと嬉しそうに笑みを浮かべながら何度もゆっくりと頭を下げる。

「もしかして藤堂先生のご家族さんで?」

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