一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜

第5話 喫茶店Berrys&Moon

 時間は流れ、私は職場復帰を果たした。ブランクがあったので業務内容にはやや不安を感じていたが、同僚らがマニュアルを客からは見えないように壁に貼ってくれていたおかげでなんとかなった。
 まことも託児所を利用し始めた。託児所ではトラブルもなく平穏に過ごしていると保育士からは聞いてたので安心して利用を続けられている。
 自宅には時折成哉の両親が訪れ、まことに顔を合わせている。

「まことちゃん大きくなったわねえ」
「かわいいなあ」
「あ、笑ってる笑ってる!」

 別の日に私の両親も自宅にやって来た。ベリが丘の街のラグジュアリーさには慣れないのか、動きが辿々しかったり緊張の面持ちを浮かべていたりしたが、まことには朗らかな笑顔をむけてくれたのだった。
 まあ、私自身ベリが丘の街自体まだまだ把握しきれていないし完璧に慣れた訳では無いのだが。

「じゃあ、また来るから」
「うん、待ってる」
「はあ……あ、運転手さん駅までお願いします」
「畏まりました。駅までですね」

 そう言って玄関から出てタクシーに乗り込む私の両親の顔はやや疲れの部分が見え隠れしていたのを見て、私はベリが丘の街に来た時の事を思い出したのだった。

(あの時も、こんな感じだったなあ……)

 
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