一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
 これだけでは諦めきれなかった成哉はその後も何度かバリエーションを変えて変顔をまことに見せるが、まことはあまり興味を示さなかった。最後に見せた変顔だけはうっすら笑ってくれたのが救いか。

「もう変顔スルースキル身につけてるなんて……」
「多分分かってないだけかもよ?」
「愛海の言う通りなら仕方ないけど、ちょっと悔しい……」
「まあ、またやったら反応するかもしれないし。でもまことは簡単な変顔では笑ってくれないかもしれないよ?」
「えーー!」

 と、ややくだらないやり取りをすると、私と成哉から同時に笑いが溢れた。

「ふふっ……」
「はははっ……なんか面白」
「まあね、成哉さん昔から変わってないね」

 彼はなんだかんだで小学校の頃から常に周囲に人がいた人気者だ。そんな彼にずっと片思いしてきたのだ。

「ふふ」

 するとまことがにんやりと笑い始めた。

「今がチャンスじゃない?」
「あっ、じゃ、じゃあ!」

 成哉が今がチャンスと言わんばかりに口を尖らせひょっとこ仮面のような変顔をしたら、まことはすん……と真顔になったのだった。

「もしかして怖がってる?」
「えっ……ああ、成る程確かにあり得るかも……」

 成哉は若干テンション下がり目になってしまったが、それも仕方ないかもしれない。
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