一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
「また何かあったらいつでも連絡してください。あと、これお渡しします」

 店員からお店の名刺とガラスのオルゴールを受け取り、会計を成哉が済ませて退店した。気がつけばテーブル席は満席間近まで客が訪れていたのだった。

「また行こうよ。閉店するまでに」
「うん」

 成哉の言葉に異論は無い。閉店するまでにメニューをある程度は食べたいし、店の雰囲気ももっと味わいたいからだ。

「また皆で行きましょう」
「ああ、愛海も行こう」
「うん!」

 自宅に戻るとお手伝いさんが買い出しに行くと言ったので成哉と夕食について相談する。

「愛海は?」
「結構食べたし、夜はあっさりめが良いかなあ」
「じゃあ、おじやにしますか? それならまことちゃんも一緒に食べられますし」
「じゃあ、それでお願いします。成哉さんは?」
「俺もそれで良いよ。おじやは消化にも良いし」
「じゃあ、買い出しに行ってきます」
「いってらっしゃい」
「気をつけてくださいね」

 買い出しに向かっていったお手伝いさんの背中を見送ると成哉がベビーカーからまことを抱き上げ、なぜか両目を見開いて寄り目をして口を尖らせるという変顔をして見せる。
 
「……」

 だが、まことは笑うでも泣くでも無く無反応だった。

「……」

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