一夜を共にしたかつての片思い相手は、優秀外科医だった。〜憧れの君と私の夢〜
「確かに毎日働きたい気持ちは分かる。だけどあんまり無理は良くないんじゃないかって。前の店だって休日の日があったし、休日入れて良いんじゃない?」
「そうだね……確かにそうかも。じゃあ、日曜日は休みにしようかな」

 それにお手伝いさん達の事も考えると、やはり休日はあった方が良いだろう。
 そんなこんなで日は流れて行ったのだった。

「ありがとうございました」
「いえ、また明日もよろしくお願いします。まことちゃんばいばい!」

 夕方。まことを連れて託児所を出た私はスーパーへ向かって歩いていた。

「!」

 まことは以前にもまして様々な事柄に興味を抱くようになった。気になるものに視線を向けたり手や指を指し示したりする。

「うっ」
「あれ、気になるの?」

 今ちょうどまことが左手を指し示している方には、木が植わっている。これはイチョウだ。

「イチョウが気になるの?」

 まことはじっとイチョウの木の幹に目線を向けている。試しに木の根元に落ちていたイチョウの葉を拾い、まことに見せたがそれにもじっと視線を向けている。

「綺麗だね、イチョウ」

 ベリが丘にはイチョウの街路樹がよく植わっている。また高級住宅街には桜の木もあったっけ。
 
(また花見に行きたいなあ)
「まこと、いこっか。スーパー行かなきゃ」

 私はまことを連れてスーパーへと歩き出す。その時。
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