彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
愛しくて
翌日出勤すると、案の定社内は大騒ぎだった。けれど、社員みんなが祝福の言葉をかけてくれた。
特に真壁さんは、泣き出す勢いで喜んでくれていた。

「桃園さんの幸せを邪魔する輩がいたら、容赦なくぶった斬ります!」

と、高らかに宣言していた。
梨香さんは、がっちゃんのピアノは後回しでいいから、俊佑さんとの時間を大切になさい!と言ってくれた。その時ニヤケ顔全開だったのを私は見逃してはいない。


週末婚のような俊佑さんとの生活は一か月ほど続いたが、2ヶ月が経ち、週の半分を彼のマンションで過ごすようになっていた。

そろそろ俊佑さんのマンションに引っ越してしまおうかなと考え始めていた頃、仕事を終え、俊佑さんのマンションに帰宅した私は、リビングのドアを開け、思わず目を見開いた。

朝までは存在しなかったグランドピアノが、当たり前のように置かれている。しかも、世界三大ピアノと言われるうちの一つだ。
驚きのあまり立ち尽くしていると、帰宅した俊佑さんがさらりと言った。

「ピアノを弾く美音を独り占めしたかったから買ってしまった」

桁違いの買い物なのに、理由が可愛すぎる。
こういうところが憎らしいほどに愛おしい。
彼とずっと一緒にいたい。私は、完全に引っ越すことを決めたのだった。

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