彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
おじさんの身体がスローモーションのように床に崩れ落ちた。

「お父さんっ!」

「おじさんっ!」

尋常でない私たちの叫びに、朝戸専務や社員が部屋から飛び出してきた。

「社長っ!しっかりしてください社長っ!」

「お父さん、しっかりしてっ!」

「救急車を呼びます!」

真壁さんが素早く119番する。

私は何をすればいい? そうだ!俊佑さん、俊佑さんが家にいる。
急いで俊佑さんのスマホに発信した。

お願い、早く出て!

私の想いが通じたのか、俊佑さんはすぐに電話に出てくれた。

「美音?」

「どどどどどうしよう!」

「何かあったのか?」

「おじさんが、昭二おじさんが」

「永峰さんがどうした?」

「たた倒れちゃった」

「何っ! 美音、まず深呼吸をしようか」

言われた通り、大きく深呼吸すると、動揺が落ち着いた。

「美音、大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

「救急車は呼んだか?」

「真壁さんが呼んでくれてます」

「永峰さんの意識は?」

「ありません」

「呼吸は?」

自分の頬を顔に近づけてみる。呼吸してない!

「してない、息してない!」

「美音、通話をスピーカーにするんだ」

「はい」

「医師の高椿です。近くにAEDはありますか?」

「あります!」

「使えますか?」

「はい」

「貴方のお名前は?」

「朝戸です」

「朝戸さん、AEDの準備をお願いします」

「わかりました」

「どなたか、倒れる前の永峰さんの様子を教えてもらえますか?」

「娘の梨香です。父は朝からずっと胸が痛いと訴えていました。少し吐き気もあると」

「わかりました。梨香さん、お父さんの服を緩めてください。すぐにAEDが使えるように」

「わかりました」

「美音」

「はい」

「救急隊員にベリが丘総合病院に搬送するよう伝えてくれ。俺の名前を言えばいい。俺もすぐ病院に向かう」

「わかりました」
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