彼に抱かれ愛を弾く 〜ベリが丘恋物語〜
芽生えた感情
賑やかに行われたパーティーもお開きの時間が訪れ、高椿社長の挨拶で締めくくられた。

招待客はそれぞれに会場をあとにする。
高級車が次々にホテルを離れて行った。

見送りを終えた高椿家の人たちもそれぞれ帰路に着く。
パーティーの責任者でもある沙織さんだけはホテルに残るようだ。

着替えを済ませホテルの外に出ると、夕方だというのに、エントランスへと続く街路樹のイルミネーションがキラキラと輝いていた。
師走の日没は早い。

私と母は、車寄せに待機していた高椿家の漆黒のセダンに乗り込んだ。
俊佑さんが一緒に乗り、自宅マンションまで送り届けてくれた。


マンション前に到着し、車から降りようとする私たちを俊佑さんがエスコートする。
完璧な容姿にスマートな身のこなし。彼は高椿家の二男、生粋の御曹司なのだ。今更ながら、とんでもないことになってしまったと妙な汗が全身を伝った。

「明日、僕が空港まで送らせてもらいます。9時にこの場所でお待ちしていますので」

「そんな、送っていただかなくても大丈夫ですよ。何から何までお世話になって、いくらなんでも甘え過ぎです」

「いいえ、無理言ってスケジュール変更をお願いしたのはこちらの方ですので、遠慮なさらないでください」

「そう? じゃあ、甘えついでにもう一ついいかしら」

「なんでしょう」

「明日、美音も空港まで連れて行きますので、私が日本を発ったあと、娘のこと、お願いしてもいい?」

「はい、喜んで」

「ありがとう、俊佑さん」

「では、僕はこれで失礼します。今日はありがとうございました」

私たちは俊佑さんを乗せたセダンが見えなくなるまで見送った。

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