藤崎くんの、『赤』が知りたい。

*****

「それでは最後に、成績発表を行います──」

体育祭のすべての競技が終わった。

夕焼け空の下で、これまでの努力の成果が発表されていく。


リレーに騎馬戦、応援団や部活対抗演目、障害物競走にムカデリレー。

紅組と白組に分かれて、その勝利の数が目の前に映し出される。


「そして最後に、横断幕の評価順位をお知らせします」

「……っ」


“この横断幕に、今から思いっきり赤で塗り潰そ!”

“もう下書きなんてどうでもいい、楓花ちゃんが持ってる赤色のイメージを全部ここにぶつけてみて!」”

“誰かの意見とか、体育祭の評価なんかどうだっていいから。楓花ちゃんの思うままに、書いてみて?”


あのとき藤崎くんが私にかけてくれたたくさんの大切な言葉たちが、ずっと頭の中でリピートされていく。

私だけの、大事な大事な宝物だ。


二人で作り上げた横断幕は、二年五組の休憩場所に堂々と掲げられている。

何度引き留めてもクラスのみんなに自慢しに行くと言って聞かなかった藤崎くんは、完成したばかりの横断幕を堂々とみんなに見せびらかした。


『す、すご……!』

『これ蓮見さんが書いたの!?すごくない!?』

みんなの反応が怖くてどうしても教室に入れなかった私は、その反応を見て泣いてしまった。

そして、玉澤くんたちはこっそりと私に謝罪してくれた。



「続いて、二学年の部。横断幕評価、第一位は──……」

横断幕の幅いっぱいに描かれた、炎の絵。


それは私がひと筆ずつ、叩きつけるように書いた赤色の塊。

こそに藤崎くんが『二年五組、優勝一択』という文字を添えてくれて完成したものだ。


どの学年よりもシンプルで、飾り気のない横断幕。

だけど、私は自慢の作品だった。

「二年五組の横断幕、題名「炎」が選ばれました」

校長先生の発表を聞いた瞬間、二年五組は全員大きな声で喜んだ。


「すごいよ!おめでとう蓮見さん!」

「一位ってやばくない!?」

「待って?もしかするとこの加点で……うちら白組の勝ちじゃない!?」


まさか、こんな日が来るなんて夢にも思わなかった。

赤が見えないことに囚われて、明るい未来なんて想像すらできなかったのに。


「──ハハッ!やったね、楓花ちゃん!」

「藤崎くん……っ!」

「わっ!」

これも全部、藤崎くんのおかげだ。

そう思うとなんだか感極まって、私は思わず藤崎くんに抱きついていた。


「ご、ごめん藤崎くん!また、赤くなっちゃうね」

「……うん、でも大丈夫」

「え?」

藤崎くんは、慌てて離れようとした私の体をギュッと抱きしめ返した。

「なっ!藤崎くん!?」


そして、私の耳元でこう言った。

「楓花ちゃん、あとで君に伝えたいことがある」

「へ!?」

「放課後、ちょっとだけ俺に時間くれない?」


それは、お互いの『赤』がうんと濃くなる……前触れだった。


【完】

< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:1

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

【1話からの長編大賞用】冴えなかった元彼が、王子様に変身して帰ってきた。

総文字数/106,059

恋愛(オフィスラブ)125ページ

スターツ出版小説投稿サイト合同企画「1話からの長編大賞」ベリーズカフェ会場エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 一方的に婚約破棄され、 路頭に迷っていたときに再会したのは 高校時代にできたはじめての彼氏だった。 自分から告白してきたというのに、 恥ずかしがり屋で、手を繋ぐことさえできなくて 緊張のあまり顔すらまともに 合わせることができなかった冴えない元彼が、 転職先の社内で『王子様』と呼ばれる大変身を遂げ 再び彼女を振り向かせようと躍起になる──……。 「わ、私……! もう恋愛はしないって、決めてるから」 二年付き合った婚約者から あり得ない理由で婚約破棄された 人生ドン底真っ最中 *奥畑 悠里(29歳)* × 「俺ね、本当は全然王子様なんかじゃないよ」 「それは悠里ちゃんが一番よく知っているでしょ?」 「ただ君にもう一度振り向いて欲しくて必死なだけ」 一生分の勇気を振り絞って悠里に告白したものの 当時初めての彼女で何をどうしていいか分からず そのまま別れたことをずっと後悔していた 大企業の経営企画部所属 花形出世街道を進む若きエース(王子) *丹波 理人(29歳)* 高校時代にうまくいかなかった 元恋人同士の二人が 大人になって再会すると──? ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。

総文字数/95,047

恋愛(純愛)129ページ

第8回ベリーズカフェ恋愛小説大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
◆◇◆◇ 「もう、恋はしなくていいかも」 二九歳、独身女。 心底恋愛には向いていない自分の人生から、 【恋】や【愛】という要素を削除しようと思っていた。 だけど、人間とは思った以上に弱い生き物で どんなに頑張っても孤独だけには勝てっこない。 一人の時間は好きなのに、孤独は嫌い。 大好きな友達もみんな次第に結婚し、家庭を築き 頻繁には会えなくなった。 旅行も、飲み会も、ご飯も どんどん回数は減っていくばかりで 気づけば仕事と家の往復を繰り返す毎日。 「和泉はきっとさ、恋愛がしたいんじゃなくて 安心できる人がそばにほしいんだよ」 「一生一人でいるなんて無理だよ」 「だからほら、マッチングアプリでもしてみな?」 「このままじゃアンタ 一生独り身で孤独死する運命辿るよ?」 脅しとも思える友人の勧めで 気乗りしないマッチングアプリを始めた。 ──ただし、条件をつけて。 【恋愛・カラダ目的は一切ナシ!】 【ただ楽しくお話ししたり 気軽にご飯に行けたりするお友達がほしいです】 【真剣なお友達募集中!】 こんな変な条件をつけた女とマッチングする男性なんていない。 実際に、自分でもアプリを登録したことすら 忘れてしまうくらいに放置していたある日。 一人の男性とマッチングした という通知と共に、彼は私の元へ現れた。 《はじめまして》 《真剣なお友達を 募集しているとのことでご連絡いたしました》 《僕も同じ条件です》 《ぜひ一度、ご飯でもいかがですか?》 「……変な人」 それが彼、北ヶ瀬 夏樹に対する最初の感想だった。 ◆◇◆◇
表紙を見る 表紙を閉じる
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 一方的に婚約破棄され、 路頭に迷っていたときに再会したのは 高校時代にできたはじめての彼氏だった。 自分から告白してきたというのに、 恥ずかしがり屋で、手を繋ぐことさえできなくて 緊張のあまり顔すらまともに 合わせることができなかった冴えない元彼が、 転職先の社内で『王子様』と呼ばれる大変身を遂げ 再び彼女を振り向かせようと躍起になる──……。 「わ、私……! もう恋愛はしないって、決めてるから」 二年付き合った婚約者から あり得ない理由で婚約破棄された 人生ドン底真っ最中 *奥畑 悠里(29歳)* × 「俺ね、本当は全然王子様なんかじゃないよ」 「それは悠里ちゃんが一番よく知っているでしょ?」 「ただ君にもう一度振り向いて欲しくて必死なだけ」 一生分の勇気を振り絞って悠里に告白したものの 当時初めての彼女で何をどうしていいか分からず そのまま別れたことをずっと後悔していた 大企業の経営企画部所属 花形出世街道を進む若きエース(王子) *丹波 理人(29歳)* 高校時代にうまくいかなかった 元恋人同士の二人が 大人になって再会すると──? ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop