陽之木くんは、いつもそうだ。
見つけられない君
 ◇
 
 辿り着いた図書室の引き戸には、『卒業生の返却のみ対応します』と張り紙がされていた。
 私は、幽霊など科学的根拠が証明されていないものは総じて『無いもの』として生きてきた。
 故人からメッセージが来るなんて、ありえない。 
 どうやってやったのかはわからないけれど、誰かが陽之木くんのアカウントに入ってイタズラで送った可能性が高いだろう。
 それでも私はメッセージの言う通りにここまで来てしまった。
 このメッセージが陽之木くん本人から送られてきているような気がしてならなかったからだ。
 自分でも正気を疑う。 死んだ人がメールを送れるはずないのに。

 鼻からゆっくりと息を吐き出して心を落ち着かせると、背筋を伸ばし、扉を開けた。
 そこはいっそ息が苦しくなるほどの静けさに包まれていた。
 誰もいない。 いつもいるはずの司書の先生も、今は席を外しているみたいだった。
 図書室には背の高い本棚がいくつもあって、入り口からは見えない本棚と本棚の間の陰に何かが、誰かがいるのかもしれないと想像できて、腹の底の方からぞわぞわと恐怖が湧き上がった。
 でも、それ以上に、私は高揚していた。 何かを期待して、ひどく高揚していた。
 ドクドクと鳴る心臓の音はそのままに、緊張に冷え切った手をギュッと握って、吸音素材の柔らかい床の上をゆっくりと歩きだす。
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