陽之木くんは、いつもそうだ。
 本棚と本棚の間をひとつひとつ覗き込む。
 いない、いない。 ここにも、いない……いない。
 そして私は、図書室内を一周した。 なにも、誰もいなかった。

 力が抜けて、窓際中央の席に腰を下ろした。 私が勉強するときによく使っていた席だ。
 ゆっくりと深呼吸して、緊張を吐き出す。 あたりには相変わらず、静寂が漂っている。

 ポケットに手を入れてもう一度スマートフォンを見てみれば、確かに陽之木くんからのメッセージが今日、数分前の時刻で届いている。
 元々約束していたことを知っているのは多分、私と陽之木くんだけ。
 それに、○○に集合!という言い回しは、陽之木くんがよく使っていたものだ。
 二人だけなのに集合って変だよと言う私に、陽之木くんは細かいこと気にすんなと笑っていたのを思い出して、胸がザワザワと騒いだ。
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