陽之木くんは、いつもそうだ。
「えっ? あ、あの、」

 困惑してかたまる私にマサキさんは笑顔で続ける。

「ガーターなし、ワンゲームね。 あ、お代は気にしなくていいから。 一番奥のレーンでどうぞ〜」

 そう言ってマサキさんは私の背中を押して手を振った。

「え……えっと……」

「いいからいいから。 なんかあったらいつでも呼んでね」

 その笑顔の圧に抗う術もなく、たくさんの疑問を抱えたまま一番奥のレーンへ足を向ける。
 レーンに近付くにつれ、前回陽之木くんと来た時も同じレーンだったことを思い出す。
 水色のベンチに座る陽之木くんの姿が蘇ったけど、当然そこに陽之木くんの姿はない。
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