星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~【初期版】
結果はすぐには出なかった。
が、じわりと客足が増えた。
二日後にはシンプルな服の発注を増やした。
若いお客さんが少し減り、年上の女性客が増えた。
「ターゲットの購買層と違うし、店のコンセプトとも違う」
後輩はぶつぶつと文句を言った。
が、売上は微増した。
「最近、店長機嫌がいいですよね」
後輩に話しかけられ、詩季はにっこり笑った。
「私ね、星を拾ったの」
「星、ですか」
「きれいな星だったわ。ちゃんと空に返したの。それが誇らしくて」
「はあ……」
後輩は理解できないようで、むしろ心配そうに詩季の顔を見た。
「やあね、たとえ話よ」
「そうですよね」
後輩はほっとしたように頬を緩めた。
通りがかった女性がふらっと立ち寄り、あれこれ服を見てから、一着を手に取って詩季に声をかけ、試着室に入った。
そして、その服を持って笑顔でレジに来る。
「私ね、ここの服が好きだったの」
女性はレジを担当した詩季に上気した顔でそう言った。
「ありがとうございます」
詩季は笑顔で答えた。が、胸には苦いものがあった。好きだった。過去形だ。現在進行形だったらどんなにいいだろう。
「でも、どんどん若い子向けになっちゃって。もう買えないって思ったの。若い子向けになったんじゃなくて、私が歳を取ったんだって、気付いたときにはちょっとショックだった」
「お若いですのに」
「お世辞はいいわ。でもね、今日また来てみて、こういうのもあるんだって、ここの服が買えて、若返ったようでうれしくなったわ。最近落ち込むことばかりだったけど、ちょっと元気が出たの。ありがとう」
思いがけない言葉だった。
「こちらこそ、ありがとうございます」
目頭が熱くなった。
女性は笑顔で店を出て行き、詩季は深々と頭を下げた。
光る粒が床に落ちて、詩季は目を拭った。