神頼み
「神社に来たの?」


朝の挨拶よりもその言葉を勝手に発していた私の口。

同じ陸上部の短距離選手である成路(なるじ)に神社の前で会うなんて思ってなかったせいだろう。


「神頼みなんかしないって、前に言ってなかった?」

「俺にはそんなの必要ないからな」


神頼みなんかしなくても勝てるんだっけ?


「でも…行鑼(あんら)には必要だ」


………私?


「毎日神社に来るくせに、俺らの事ばかり神頼みしてるんだろう?」

「そう…だよ?
皆が怪我しませんようにって…」

「どうして自分の神頼みはしない!!!
去年怪我して大会に出られなくなったのは行鑼だろ!!!」


私は去年、大会の一週間前に足を怪我してしまい、大会に出場できなかったのだ。

それじゃあ……。


「成路は私の神頼みをするために神社に」

「高校最後の大会だからな。絶対に出場させたかった……。
まあ、俺が神頼みするから、絶対に出場できるけどな」
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