セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
――ノート?


 置いてあったのは、1冊のノート。
 ズタズタに切り裂かれ、マジックで表紙もグチャグチャにされている。

 私のものではない。
 私はルーズリーフ派なので、そもそもノートは使っていないのだ。

 とりあえずノートを手にとって、その裏を確認すると、『月乃愛花』と書いてある。


――!!

 愛花ちゃんのノートだ。
 やっぱり、虐めにあっていたのか。
 でも、それが、どうしてここに……
 

「あ。」


 教室に戻ってきたクラスメートが、私の持っているノートに気付いたようで、立ち止まった。


「……。」

 どうしたの、と問いたそうな目をしている。
 あまり親しくない子なので、互いに話しかけるのを躊躇して、変な沈黙があった。


 その沈黙を破るように、今度は優奈ちゃんが教室に戻ってきて、「どうしたの? これ。」と聞いてきた。


「私のじゃないの。戻ってきたら、置いてあって……。」

 説明をしているうちに、続々と、クラスメートが戻ってきた。
 愛花ちゃんも、他の人達とともに戻ってきたけれど、こちらには気付いていないようだ。


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