セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~

3歳 〜友達を作ってみよう〜


 3歳になったばかりの春。

 早生まれの私は、ゲームの舞台である王明学園の、附属幼稚園に入園することとなった。

 幼稚園は1クラス20名の、1学年2クラス。
 ゲームのメイン・ストーリーでヒロインと結ばれる相手役――杵築裕也(きづきゆうや)とは違うクラスだったので、ホッと胸を撫でおろした。


 杵築は、ヒロインが入学してくる高校時代、一年生にして異例の生徒会長をつとめ、学園の王として君臨する。

 その杵築の婚約者に内定していた百佳は、杵築と親しくなっていくヒロインを憎み、虐めをエスカレートさせていくことになる。

 虐めからの断罪コースを回避するためには、杵築に近づかないことが一番だと思う。


 とはいえ、どれだけ彼らから距離をとっても、私はこのゲームの悪役令嬢。ヒロインを虐めたと冤罪をかけられることはあるかもしれない。

 そのときに、『まさか、何かの間違いでは?』と周囲に言ってもらえる程度の信頼を得ておきたい。
 まずは、最初の印象を良くすることが肝心だ。名付けて、ザ・『素敵な黒瀬百佳さん』計画――!


 私は入園までの間。

 春名さんの買い物に付いていって、素敵な入園グッズを買い漁り、美容品もおねだりし、そして自宅では……。

 便器に座り、地味にトイレトレーニングに励んだ。
 お漏らしのイメージだけは、絶対回避したいです。
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