セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
 黒瀬家ではなぜか、毎年、大晦日の夜に、家族でおせち料理を食べる。

 お正月は祖父母の家に挨拶に行ったり、両親は知人らとの会食や新年会に出たりするので、家族でゆっくりとはできないからだろう。

 今年の大晦日は、いつもの長細いテーブルではなく、隅のコタツの方に集まって、家族三人でおせち料理を食べた。
 なんだか、両親がコタツに入っている姿は新鮮だ。


「明日は、黒瀬の母のところに、挨拶に行くからな。」

 父は、あまり浮かない顔で言った。
 黒瀬の母というのは、父の母である。

 仲が悪いようではないけれど、父からみれば実の母なのに、昔からどこか他人行儀で、距離間があるのだ。


「なにやら、百佳に話があるらしい。」
「え? 私?」

 びっくりした。
 母もキョトンとしている。
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