セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~

閑話   〜嘘をついてみよう〜


 今日は、エイプリルフールだ。

 たまたま、先日買った雑誌に、『エイプリルフールのネタ集』が付いていたので、今年はこれを参考に、少しだけ実践してみようと思う。


《1、父の場合》

 エイプリルフールの朝。私は、両親の寝室の時計を、1時間早めた。

 その上で「会社に遅刻だよ!」と言いながら父を起こすと、父は慌てて飛び起きた。
 けれど、ネタばらしをする前に、父は会社に行ってしまった。

 リアリティのあり過ぎる嘘は、面白くないので、次はもう少し、大きな嘘をいってみよう。


《2、春名さんの場合》

 私は父の件の反省を生かし、少し大きな嘘をついてみることにした。

 まず外に出て用事を済ませ、頃合いを見計らって、スマホで家に電話をする。そして電話に出た人に頼んで、春名さんに代わってもらった。


「もしもし。珍しいですね。お嬢様が私に電話など。」

「春名さん、実は……。」
「?」

「今、駅前の警察署にいるの。
 何か誤解されて、捕まっちゃったみたい。迎えに来てくれないかな?」 

 なーんちゃって。

 という前に、春名さんは電話を切ってしまった。


――まずい!!


 私は慌てて駆け出して、春名さんが警察署に乗り込む前に、つかまえてネタばらしをすることができた。


「冗談になりませんよ。完全に信じました。」
「うう……。」

 エイプリルフールなのに、春名さんは本気で怒っている。心配させちゃう嘘は、良くなかったかな。

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