セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
「あなたは、何でいつもこちらの部屋にいるんですか。仕事があるでしょう。」

 気が散るのは、私だけではないらしい。
 羽村は基本的に人当たりの良い人間なのだけれど、蓮くんにはなぜかキツめの当たりをする。


「ちゃんと仕事してるじゃないっすか~。今!」

 蓮くんは、ぺちゃくちゃ話をしながらも、一応、愛花ちゃんの仕事を手伝っているのだ。


 1年には1年の仕事があるでしょう、と言い返す羽村に、蓮くんがあーだこーだと屁理屈を返していると。

 佐々木くんが、蓮くんに話しかけた。


「あの。この30番の『LIANS』って、何をやるの?」

 佐々木くんは、今、進行次第のチェックをしているところだ。30番の発表の責任者欄に、蓮くんの名前があるらしい。


 よくぞ聞いてくれました、と喜ぶ蓮くん。

 LIANSとは、『蓮とその仲間』という意味で付けた名称だという。何でも、蓮くんはバンド活動をしているらしい。


――バンド!!


 私は、衝撃を受けた。
 憧れのバンド活動をしているという人に出会ったのは、今世では初めてだ。
 何と、羨ましい。
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