セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
※※※※


 帰り道。
 私は一人、昇降口で正靴に履き替えながら、楽しそうな蓮くんのバンド演奏を思い返していた。


――あーあ。いいなあ。

 私もあんな風に、皆で演奏したいけど。私がバンドをやる夢は、この先も、実現しなさそうだ。


「黒瀬。」

 振り返ると、三杉がいた。


「お疲れー。」
「ああ。」

 私は、上靴を下駄箱に入れて、帰ろうとした。

 けれど。先に履き替えていたはずの三杉が、なぜかまだ、入口付近に立っている。


「?」

――何かな。
 まさか『一緒に帰ろう』では、ないだろうし。

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