セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
「どうかした?」

「いや。お前、バンドは無理だろ。」
「うん。」

「他の楽器と合わせたいだけなら、付き合ってやってもいいから。」
 うん?

「それで、我慢しとけ。」
「……。」


――えーと。

 つまり、三杉は。

 バンドを組む相手のいない私に同情して。ギターと音を合わせる役を、買って出てくれたということ?


「あ、ありがとう……!」

 これは嬉しいかも。
 三杉なら、楽器は何でも上手だし。


 実はこれまで、他の楽器と合わせたいと思っていた曲が幾つもある。私はちょっとはしゃいだ気分で、あれこれと提案をしながら、三杉と一緒に帰った。


 門までの帰り道は、ほとんど、私が一方的に喋り続けていたのだけれど。
 三杉も音楽には詳しいので、退屈することはなかった。
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