セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~

17歳 〜カッパドキアに行こう2〜


 目があった。


 たしかにそう思ったのだけれど。三杉は反応を見せることなく、スッと、男たちの方へと視線を移した。

 気色ばむ男たちを前に。全く動じない様子で、一人玄関の中に入ってくる三杉――、それは私の知らない男みたいだ。


『連れが世話になったようだ。ありがたい。』

 流暢な英語に、男たちは即座に反応した。


『はあ? てめぇ、ふざけるなよ。』
『何、勝手に入ってきてやがる!』

『いや。迷子になっていた連れに親切にしてもらい、本当に感謝している。だから――。』

 三杉は、リーダー格の赤髪男に視線を固定すると、すっと、身体が触れるほどに近付いた。
 そして、男の耳元で何かを囁くと――、手に何かを握らせた。

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