セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
「そっかぁ……。杵築くんが婚約したら、ファンの皆が悲しむね~。
 私もちょっと寂しいかな。」

 可愛く拗ねる、愛花ちゃん。

 杵築は、愛花ちゃんと私を順に見た後、今度はクッキーの箱を開けた。


「いや。だから、まだ本決まりじゃない。
 話を蹴りたければ、祖父と親戚連中を納得させられる、別の相手を連れてこいと言われている。――卒業までに。」

「卒業までに?」

 あと、1年もないじゃないか。

「ふぅん……。そうなのね。」

 愛花ちゃんは、頷きながら、何かを考えこんでいる。


――あっ。

 まさか、私が杵築と婚約しなかったから。
 白鴎堂のその子が、ヒロインである愛花ちゃんのライバル役ということに、配役が変わったのではないだろうか。

 だとしたら、私が悪役令嬢として断罪されるフラグは折れたのかも!?
 

 やったー、杵築の婚約、大歓迎!! ……の、はずだけど。


 杵築が、愛花ちゃんでもない、佐々木くんでもない、全然知らない誰かと婚約するというのは、何だか肩すかしをくらったような感じがして。

 思っていたほど、嬉しくはなかった。
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