セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~
17歳 〜神戸に行こう〜
新神戸駅に着いたら、もう昼前の時間だ。
私たちは新幹線を降りると、すぐタクシーに乗り換えて、中華街である『南京町』に向かった。
「今回、当社で企画しているのは、『神戸を巡る、ゲーム&婚活ツアー』です。
各ポイント毎にクイズやミニゲームを用意して、盛り上がるツアーにすることを考えています。
実際に現地で過ごしてみて、感想や気付きなどがあれば教えて下さい。」
執事さんの説明は分かりやすい。
たしかに、婚活に意欲的な男女が小旅行を共にして、ゲームなどで盛り上がれば、自然にカップルが誕生しそうだ。
「この肉まん、美味しいですね。」
私たちが最初に食べたのは、神戸の中華街で一番人気と名高い、有名な店の肉まんだ。
一個70円という低価格、「小さなサイズ」で食べやすいのもポイントが高い。
婚活中の女性が、初対面の男性の前で大きな肉まんをかじるのは、抵抗があるだろうから。
「黒瀬家のご令嬢に、立ち食いをさせてしまって……。」
執事さんは申し訳なさそうにしているけれど、前世が庶民の私は、全く気にならない。
「全然平気ですよ。中華街は、こうやって食べ歩くのが楽しいんですから。」
サラッと答えると、執事さんは驚いたように、目をパチクリしていた。