セレブ御曹司の恋を遠巻きに傍観するはずだったのですが。 ~能面顔の悪役令嬢は、それでも勘違いに気付かない~


「黒瀬さんは。杵築くんや、三杉くんとかのこと、ちょっと意識してるよね。」

「――え!?」 
「見てたら、分かるよ。」

――この無表情を見て?
 分かるわけがないし、そもそも事実と異なる。


「俺も、3年前とは、変わった。――黒瀬さんの、おかげで、変われたんだ。」

 優しい口調で言うけれど。
 ひとこと前のトンチンカンな発言からして、佐々木くんの天然ぶりは、変わっていない。


「だから今も、考えてたんだ。黒瀬さんの、気持ちを無視して、申し訳ないんだけど。」

――ん? 何が?


「この観覧車が、このまま動かないなら。ここで既成事実を作っちゃえば――、こんな俺でも、大逆転できるかもって。」

 佐々木くんは、私の左手を、ギュッと握った。


「――それでも、安心だって、言う?」


 私が、見上げると。
 佐々木くんは、いつもの癒やし系の笑顔で、笑っていた。
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